液体えきたい)” の例文
旧字:液體
おとこは、こちらの石油せきゆかんのふたをりました。青々あおあおとした、強烈きょうれつ香気こうき発散はっさんする液体えきたい半分はんぶんほどもかんのなかになみなみとしていました。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
霧がけたのでした。太陽たいようみがきたての藍銅鉱らんどうこうのそらに液体えきたいのようにゆらめいてかかりけのこりの霧はまぶしくろうのように谷のあちこちによどみます。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
じれったそうに、あいだにつめたむぎわらをほうりだし、中のガラスびんをひとつずつ、だいじそうにとりだした。どのびんにも液体えきたい粉末ふんまつがつまっている。
たゞ不思議な緑色みどりいろ液体えきたいに支配されて、比較的世間せけんに関係のない情調のもとうごいてゐた。それが平岡の名を聞くや否や、すぐ消えて仕舞つた。さうして、何だか逢ひたくない様な気持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一切の光熱線こうねつせんが悉く此径三尺の液体えきたい天地に投射とうしゃせらるゝかと思われる。冷たく井を出た水も、日の熱心にほだされて、段々冷たくなくなる。生温なまぬるくなる。所謂日なた水になる。正午の頃は最早湯だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しゃくのますと石油せきゆをくむしゃくがあって、おとこはそのしゃくあおれる液体えきたいなかむせつな、七つ八つの少年しょうねんが、熱心ねっしんにかんのなかをのぞいて、その強烈きょうれつ香気こうきをかいでいるのでした。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)