流涕りゅうてい)” の例文
流涕りゅうていの歓喜にひたって洗礼をうけます。そして、厳かな誓いをむすびます。初めて、切支丹族の仲間入りをしたわけです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしそれ死にいたりて流涕りゅうていし、落胆し、顔色土の如くなるが如きは、もとより死に支配せられたる者にして、言うに足らず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
(次いで正木博士の自殺を告げ死因に就ての心当りを問えば甘粕氏は愕然蒼白となり流涕りゅうていして唇を震わしつつ)
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こういうふうに考えてくると流涕りゅうていして泣くという動作には常に最も不快不安な緊張の絶頂からの解放という、消極的ではあるがとにかく一種の快感が伴なっていて
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
但馬たじま皇女が薨ぜられた(和銅元年六月)時から、幾月か過ぎて雪の降った冬の日に、穂積皇子が遙かに御墓(猪養の岡)を望まれ、悲傷流涕りゅうていして作られた歌である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
例によって覗いていると、その男はドーブレクに対して流涕りゅうていして哀訴し合掌して嘆願し、最後にはピストルをふるって威嚇したが、ドーブレクはセセラ笑って取りあわない。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
また一緒にホテルにいった後、彼女は包まず、自分の恥ずかしい過去を語り、流涕りゅうていし、しかも歓喜して私の身体を抱いた。私は生れて初めて、肉欲の喜びを知ったと思った。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
かつて一牝馬難産のところへ行き合せしに、その部の酋長これを憂うる事自分の母におけるごとく、流涕りゅうていして神助をいのれば牝馬これに応じてことさらに呻吟しんぎんするようだった。
建文三年二月、燕王自ら文をせんし、流涕りゅうていして陣亡の将士張玉等を祭り、服するところのほうを脱してこれき、以て亡者ぼうしゃするの意をあらわし、曰く、れ一いえどもや、以て余が心をれと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かれはやがてさんさんと流涕りゅうていしていた。悔いの涙を見せてしまうと、かれはようやく自分をとり囲んでいたあらゆる防塞から自らのがれたような気がした。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数時間後に絶命した後にもまだ涙は見せなかった。しばらくして後にその子の母から、その日の朝その子供のしたあるかわいい行動について聞かされたときに始めて流涕りゅうていしたそうである。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
おもいこゝに至るごとに大王の為に流涕りゅうていせずんばあらざる也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
義清は、流涕りゅうていを拭って、漸く、かたちを正し、謹んで今日までの恩遇に謝してから、こういった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここまで読むと徐庶は、潸然さんぜん流涕りゅうていして燭もめっすばかり独り泣いた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人々は、流涕りゅうていしながら、違背なきことを誓った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、流涕りゅうていしながらいった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)