あぶく)” の例文
彼らがそこにいることを知らせるのは何かと言えば、たまに水のあぶくが幾つか浮び上がってきて、澱んだ水面ではじけるだけである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
あぶく、泡、泡……あわんぶく、おお泡んぶく、かたきを取ってくりょう、泡んぶく、お前敵を取ってくりょう、敵を取ってくりょう」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
黄泥こうでいの岸には、薄氷が残っている。枯蘆かれあしの根にはすすけたあぶくがかたまって、家鴨あひるの死んだのがその中にぶっくり浮んでいた。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あアン! 何が障子じゃ? 年はりとうない。魚があぶくいとるようで、さっぱり聞えぬ。何じゃイ、あアン?」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ぶくぶくとあぶくが立つ泥の中にひょいと身を起すと、池は浅くて案外足元が泥の中にしっかりしていた。
特殊部落の犯罪 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
私は昔は混沌界こんとんかいを見たが、今はただ泥のあぶくだけだ。学校の生徒が国民軍のことを評議するなどとは、オジブワやカドダーシュなんかの化け物のうちにも見られないことだ。
あっち側のゴザの上にはまま母のトラが、帯なし袷せを前垂れで締めた小柄な姿を外の明るい方へねじむけて、口じゅうじじむさいあぶくだらけにしながらおはぐろをつけている。
だるまや百貨店 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
我が此川を見た最初さいしよの記憶は、きみが背中にぶさつて野桑のぐはを摘みに來た時、ほらこれ大川だよと指さして教へられた。小さなうづいろぽいあぶくを載せた儘すい/\と流れてゐた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
あぶく立つて煮えこぼれてる
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
眼前に漂うあのあわんぶくを見て、「あぶく、泡、泡、泡んぶく、おお、泡んぶく、かたきを取ってくりょう、泡んぶく、お前、敵を取ってくりょう、敵をとってくりょう」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あぶく立つてる
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)