“気息(きそく)” の例文
旧字:氣息
一同が縄(なわ)をひくと! 見よ! たくたくたる丈余(じょうよ)の灰色の巨鳥(きょちょう)! 足はかたくしばられ、恐怖(きょうふ)と疲労(ひろう)のために気息(きそく)えんえんとしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
実は、かの女たちの心のおくにも、追いつめられて奄々(えんえん)たる気息(きそく)の貞操はまだ生きていた。男に切り売りしているものは貞操ではない。
その指導者のオンドリ先生と来たら、鳴りをしずめる以上にへたばってしまって、僕の足許(あしもと)に長く伸びて、気息(きそく)えんえんである。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
安政元年には四十六歳で、ロシアの使節に逢(あ)はうとして長崎へ往(い)つた。其留守には吉田松陰が尋ねて来て、置手紙をして帰つた。智者と智者との気息(きそく)が漸(やうや)く通ぜられて来た。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ヴィタリスはもう死んでいた。わたしも死ぬところであったのを、カピが胸(むね)の所へはいって来て、わたしの心臓(しんぞう)を温(あたたか)かにしていてくれたために、かすかな気息(きそく)が残(のこ)っていた。
あなたを通じて再び人類の生きた気息(きそく)に接します
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
ふたりはハッとして顔をむけると、ふんぷんとゆれ散った藤(ふじ)の花をあびて鎧櫃(よろいびつ)をせおった血まみれな武士(ぶし)が、気息(きそく)もえんえんとして、庭(にわ)さきに倒(たお)れているのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいはなお一るの気息(きそく)が通っていたのではなかろうか、自分らはそれをたしかめもせず、ただおそろしさのために、人間の本分をおこたった、慚愧(ざんき)の念が心をかんだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
片肌(かたはだ)をおとした凛々(りり)しいふたりの射手(いて)は、もう支度(したく)のできている場所(ばしょ)に身がまえをつくって、弓懸(ゆがけ)をしめ、気息(きそく)をただし、左手にあたえられた強弓(ごうきゅう)を取って、合図、いまやと待ちうけている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)