母子ぼし)” の例文
お勢母子ぼしの者の出向いたのち、文三はようやすこ沈着おちついて、徒然つくねんと机のほとり蹲踞うずくまッたまま腕をあごえりに埋めて懊悩おうのうたる物思いに沈んだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
……そうだ、そうだったわと、今さらながらの一つの光明を、おん母子ぼしの姿から、いただいた気がいたしました
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとよりこんな事で罪人の助かるけはないが、とう/\仕舞しまい獄窓ごくそうを隔てゝ母子ぼし面会だけは叶いました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
されば母子の間はもとのごとき破裂こそなけれ、武男は一年後の今のかえってもとよりも母に遠ざかれるをうらみて、なお遠ざかるをいかんともするあたわざりき。母子ぼしは冷然として別れぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
室内の春光はくまでも二人ふたり母子ぼしに穏かである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いずれ、しかるべきお方の末とは存じますが、おん母子ぼし、心をあわせて、琵琶御修行の上洛とは、お羨ましい。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘の嫁入前よめいりまえ母子ぼしともにいそがわしきは、仕度の品をかってこれを製するがために非ず、その品を造るがためなり。あるいはこれを買うときは、そのこれを買うのぜにを作るがためなり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
内なる尼前のおん母子ぼしへ物申しまする。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)