“殴(ぶ)” の例文
旧字:毆
未練らしく此の間も来て酷(ひど)い事を言って、私の髻(たぶさ)を把(と)って引摺り倒し、散々に殴(ぶ)ちましたから、私も口惜(くやし)いから了簡しませんでしたが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
家や田畑は、弟に取られるしな、食物もろくろく食わせらんし、なんぞ口答えすると、弟三人がよってたかって殴(ぶ)ち打擲(ちょうちゃく)するんじゃもの。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
或る夕方、夜警に出ていると、警官が四、五人足早に通り過ぎながら、今二人伴(つ)れて来るから殴(ぶ)っちゃア不可(いか)んぞと呼ばわった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その婆さんが彼をいつも殴(ぶ)つのだと言ったり、お二人の婚礼はいつですかと訊ねたり、雪だといって、彼の頭へ紙きれをふりかけたりなどもした。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
おとら 殴(ぶ)つ気か。この年寄りを往来中へ突ッ転ばした上に倅みたいな年頃のくせをして、まだ殴つ気なのか。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
二言目には病身の人特有の癇癪(かんしゃく)を起して妻を罵しり、揚句の果は手を上げる事さえ屡々あるという事でした。現に、小田家の召使等(ら)は、主人が妻を殴(ぶ)った所を数回見たというのです。
彼が殺したか (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
悪者の方でも相手が女だからびくともせず、若(も)し己を取捕(とッつか)まえたら殴(ぶ)ちのめして逃げようと腹を据え、今出に掛ると
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『お父ちやん、お父ちやん! ペトゥルーシャを殴(ぶ)つちやあ、いけないようつ!』と喚き出しをつたのぢや。
政吉 (この以前より、幾度か決心して逡巡し、遂に飛び出して、文太郎の眉間を殴(ぶ)つ)
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
甚吉 おのれ、殴(ぶ)ちゃがったな。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
自分で突当って置きながら怒(おこ)りまして、巡礼を捕らえ続け打ちに殴(ぶ)ちましたから、禿頭へ傷が出来ましたが、侍は尚お足を揚げて老爺(じい)さんを蹴返しました
その暢気さ加減には、コワリョーフもさすがにかっとなり、帽子でイワンの顔を殴(ぶ)って呶鳴りつけた。「この豚め、いつも馬鹿な真似ばかりしてやがって!」
鼻 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
サア殺せと仰しゃッた時は誰も殴(ぶ)てなかったとね、仕事師手合(でええ)が五十人許(ばか)り手鍵を持って来たが、打(ぶ)てなかったくれえだから組合(くみええ)の者が皆(みん)なそう云って居やす
おとつつあん勘弁しておくれ! どうか怒らないでおくれ! さあ、ここに鞭があるだから、幾らでも心の済むだけ殴(ぶ)つておくれ。俺の方からかうして鞭を差し出すだよ。
かぢ「先刻(さッき)豆腐屋の前で侍(さむらえ)に殴(ぶ)たれていて、可愛相だから連れて来て泊めたんだが、何だよお前」
その時、入口からひょっこり姿を現わしたのは理髪師(とこや)のイワン・ヤーコウレヴィッチであったが、その動作(ものごし)はたった今、脂肉を盗んで殴(ぶ)ちのめされた猫みたいに、おどおどしていた。
鼻 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)