のこん)” の例文
旧字:
うの花にはまだ早い、山田小田おだ紫雲英げんげのこんの菜の花、並木の随処に相触れては、狩野かの川が綟子もじを張って青く流れた。雲雀ひばりは石山に高くさえずって、鼓草たんぽぽの綿がタイヤのあおりに散った。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
峰には未だ、のこんの雪がかっきりと、白く浮き上って見えるほどである。一体に、谷は、四月の末か、五月頃の柔々しい呼吸で充ちていて、大きな声を出すのすら、いたいたしいようだ。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
と辻便所より女乞食、はだえの色の真白きに、海松みるのごときあわせまとえば、泥にまみれしのこんの雪。破草人やぶれかがしの笠をかぶりてよぼよぼとつえすがり、呼吸いきづかい苦しげに——見せ懸けたるのみ、実はしからず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)