殉死じゅんし)” の例文
「無論責任を感じているんだけれど、君も知っている通り我儘な妹だ。兎に角、君が若しこの為めに自殺するようなら僕は殉死じゅんしする」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
鶴見が今挙げた卯の花は阿部家滅亡の雰囲気のなかにくっきりと花を咲かせていたが、それとは別に内藤長十郎殉死じゅんしの事がその前段にある。
その志だけで、武士の義も、父子おやこの道も、立派に通って居る。御城下の土を踏めば、籠城ろうじょう殉死じゅんしか、いずれは死の一途に極まっているものを
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
独りしょんぼりと曇った空の下に取り残されて立つ有様かえって殉死じゅんしの運命に遇わなかったのをうらみ悲しむように見られた。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翁草に興津が殉死じゅんししたのは三斎の三回だとしてある。しかし同時にそれを万治まんじ寛文かんぶんの頃としてあるのを見れば、これは何かの誤でなくてはならない。
妻は笑って取り合いませんでしたが、何を思ったものか、突然私に、では殉死じゅんしでもしたらよかろうと調戯からかいました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その後赤穂あこう城中における評議が籠城ろうじょう殉死じゅんしから一転して、異議なく開城、そのじつ仇討あだうちときまった際は、彼はまだ江戸に居残っていたので、最初の連判状には名を列しなかった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
そうだとすれば、自分は当然殉死じゅんしすべき運命のもので、今の生存は惰力に過ぎないのか。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
殉死じゅんしと言うんでしょうか、そういうの」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
井の底にくぐり入って死んだのは、忠利が愛していた有明ありあけ明石あかしという二羽の鷹であった。そのことがわかったとき、人々の間に、「それではお鷹も殉死じゅんししたのか」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
『よいとは思わぬ。ぜひがないと思う——。然し、拙者の実の存念は、殉死じゅんしにある、最上の一策は、一同、大手御門内に座をならべて、亡君のお後を慕いまいらすことじゃ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
閑叟公かんそうこうでございます。此方こっちのは公に殉死じゅんしをなされた古川松根翁ふるかわしょうこんおうです」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
身分こそ五両三人扶持の徒士かちにすぎなかったが、主家没落の際は、赤穂城から里余りよの煙硝蔵に出張していて、籠城ろうじょう殉死じゅんしの列にれたというので、それと聞くや、取る物も取りあえず城下へ駈けつけて
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
先年妙解院殿御卒去のみぎりには、十九人の者ども殉死じゅんしいたし、また一昨年松向寺殿御卒去の砌にも、簑田平七正元みのたへいしちまさもと小野伝兵衛友次おのでんべえともつぐ久野与右衛門宗直くのよえもんむねなお宝泉院勝延行者ほうせんいんしょうえんぎょうじゃの四人直ちに殉死いたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「その時には落第にしてもらう。殉死じゅんしだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、刺しちがえて殉死じゅんししたとある。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)