此寺このてら)” の例文
奥州筋おうしうすぢ近来きんらい凶作きようさく此寺このてら大破たいはおよび、住持ぢうじとなりても食物しよくもつとぼしければそう不住すまず明寺あきでらとなり、本尊ほんぞんだに何方いづかた取納とりおさめしにやてらにはえず、には草深くさふかく、まこと狐梟こけうのすみかといふもあまりあり。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此寺このてらの式は何と云ふのか知らないが、赤煉瓦づくり大分だいぶ東洋臭い古い建築である。聖壇がモザイクで出来て居る。内院の廊の壁に坊さん達の肖像を濃厚な色彩でいたのが大半げて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すると和尚をしやうさんの手許てもと長谷川町はせがはちやう待合まちあひ梅廼屋うめのや団扇うちはが二ほんりますから、はてな此寺このてら梅廼屋うめのや団扇うちはのあるのはういふわけか、こと塩原しほばらはかにも梅廼屋うめのや塔婆たふばが立つてりましたから
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
檀家の一軒も無い此寺このてらの貧乏は当前あたりまへだ。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)