此寺ここ)” の例文
その人のうちに泊り込んで、私は此寺ここに仮入学をしたいがどういう手続にすればよいかと尋ねますと、いろいろ教えてくれました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「実は、老先生の出先も心配になるので、店の者を、後からけさしておいたので、此寺ここと分りましたから、すぐに、駕を持って参りました」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此寺ここの門前に一軒、婆さんと十四五の娘の親子二人暮しの駄菓子屋があった、その娘が境内けいないの物置に入るのを誰かがちらりと見た、間もなく、その物置から、出火したので、早速さっそく馳付かけつけたけれども
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此寺ここへおいでになってから、これで二度ふたたびあなたの身に殺気の起ったことが私の心に響きました。その一度は、先日の夜、あなたは、今のあの娘さん——お雪ちゃんというのを斬ろうとなさいました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それゆえに彼らはその点を恐れてこの時にはなるべくやらんようにして、此寺ここに原因を起した決闘を寺に帰って後やることが多くあるんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「あっしは、老先生に、花世様の守護をいいつけられて、此寺ここに見張をしているんですが、旦那こそ、どうしたんです」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このごろ、此寺ここの娘さんはドチラの温泉へまいりましたか」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「其女も、幼少から、此寺ここの和尚には、育てられて来た人。こういう時には、住持の手伝いになってやれ。……よいか。ちょっと、顔を出せばよいのだ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたもほんとに文法を知りたくば此寺ここに二、三年間留まってあの方に毎日習学したらわかるであろう。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此寺ここにはいないの?」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
上野介は吉良家の初祖と、中興ちゅうこうの祖と、自分との三つの像をその頃作らせて、此寺ここに納める宿願を立てていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
辿たどって、此寺ここに落ちて来た武田衆は、身分ある者、身分のかろい者、何分大勢のことですから、入念にたださねば
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「秦野屋はまだ参っておりませんか。実あ、ゆうべおそく、話があるから此寺ここへ来いという飛脚があったので、日の暮れるのを待ちかねてやって来ました」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところが、今夜は腰をすえちゃいられないので、この九兵衛のからだもせわしいが、兄貴、おめえも此寺ここに悠々と飲んでいるなんて、すこし物騒過ぎやしねえか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわんや、その忠誠なる家来共が、此寺ここの一樹を頼って、亡君の墓前に衷心の手向たむけをいたそうとするのに、何を以て、僧侶の立場からそれをこばむ理由があろうぞ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
程なくかの女は、此寺ここからもすがたを消した。檀家先の藤井家へ好まれて小間使にさし出したという。それだけは確実らしい。以後、かの女のすがたをここで見た者はない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——わかっています。織田おだどのの軍勢ぐんぜいが、いよいよ此寺ここへ押しよせてきたのであろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしここ数日、かなりの努力をつくしたが、お千絵の所在について皆目手がかりがなく、お綱もあのまま、此寺ここへ訪ねてこず、二人のかこむ炉には焦躁しょうそう沈鬱ちんうつの夜がつづいた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と呼ばわり呼ばわり、そこのおばしまの直下へ或いは橋廊下へじのぼって彼の側面から、必死と迫って来る甲冑の敵は、ちょうど此寺ここのさいかちの木に朝晩群れるからすのようであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「蜂須賀どのは、此寺ここの一僧をつれて、どこぞへお出かけになりました。多分——」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
乳母うばのおさきというあまが、尼になっているつもりで、今夜此寺ここへたずねて来る」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それまでは敵にさとられぬように、お辛くとも此寺ここでじっとご辛抱して下さい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸いに此寺ここにいる身でもあることゆえ、武蔵めの生命いのちが終るまで、怠らずに、ここで見張っていやい——真夜半まよなかなど、気をつけておらぬと、あの沢庵が、何を気ままにしてのけぬものでもない
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「俺は今、怪美人の玉枝を此寺ここまで追いつめて参ったんだ」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こよいも佐渡は此寺ここへ泊って、遠蛙とおかわずの音を聞いていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)