此家このうち)” の例文
お前さんがそんな賤しい仕事をしてる為にわたしは貴婦人に交際つきあひが出来ないぢや無いの。わたしはもうお前さんに愛憎あいさうが尽きたから此家このうちを出てきます。
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
「火事氣違ひの仲吉ですよ。三河屋の細工物屋の息子、親父の市五郎は、此家このうちのお神さんの兄貴ですぜ」
も一つい事は——部屋の事ではないが、此家このうちは下宿料の取立が寛大だった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
僕の知つた男にね、細君がいやになつて離縁を請求したものがある。所が細君が承知をしないで、わたくしは縁あつて、此家このうち方付かたづいたものですから、仮令たとひあなたが御厭おいやでもわたくしは決して出てまいりません
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
皇太子はお玉母娘おやこを先立てゝやがて此家このうち這入はひりまして眼の前の不思議に感心をしました、左様さうしてこの娘が大きくなつたらば自分のきさきに貰ひたいと望みました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
「でも、どんなに企らみが深くても、そとから持つて來たのではないでせう。疊紙の中に入つて居たのは、此家このうちの仕事場の抽斗ひきだしに入つて居た、寺や屋敷の下繪圖面だと言ふから」
収入の不定な私には是が何よりだったから、私は二年越此家このうちに下宿して居た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此家このうちではまだ電気をかないのか」と顔付かほつきには全く縁のないこといた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私は此家このうちで一番上等にしてある二階の八畳の部屋を占領していた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)