歌声うたごえ)” の例文
旧字:歌聲
縁者えんじゃ親類加勢し合って、歌声うたごえにぎやかに、東でもぽったん、西でもどったん、深夜しんやの眠を驚かして、夜の十二時頃から夕方までもく。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
このとき、どこか、まち喫茶店きっさてんから、レコードでならす、あまったるい歌声うたごえながれてきました。そこには、ことなった生活せいかつのあることをおもわせました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お使僧の説教は、彼女にとつてはのぞきからくりの歌声うたごえよりも猶無関心のものであつた。唇はたゞ動いて居るとしか思へなかつた。之を聴聞したい為に彼女はこゝへ来たのではない。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
ほのかな歌声うたごえが、管絃楽のアンサンブルの中から音の糸を繰りだすように洩れてきた。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
うしなはれた美しい日々ひび歌声うたごえではない
霙の中 (新字旧仮名) / 森川義信(著)
東の辰さんの家では、なりは小さいが気前の好い男振りの好い岩公が音頭とりで、「人里ひとざとはなれた三軒屋でも、ソレ、住めば都の風がゥくゥ、ドッコイ」歌声うたごえにぎやかにばったばた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それからのちも、ぼくは桑畑くわばたけへいったがまったくひとかげがなかった。きたほうへたれさがる水色みずいろそらをながめていると、どこからか、ほそい歌声うたごえがきこえるようながして、ただぼんやりたたずんだ。
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其が朝露をびる時、夕日にえて白金色に光る時、人は雲雀と歌声うたごえきそいたくなる。五日は檞餅かしわもちの節句だ。目もさむる若葉の緑から、黒い赤い紙のこいがぬうと出てほら/\おどって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)