欝蒼こんもり)” の例文
柵の中は、左程広くもない運動場になつて、二階建の校舎が其奥に、愛宕山あたごやま欝蒼こんもりした木立を背負しよつたやうにして立つてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
するとあいちやんはなんおもつたか一生懸命しやうけんめいしてたちま欝蒼こんもりしたもりなか無事ぶじみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
路は昼間小僮せうどうに案内して貰つて知つて居るから別段甚しく迷ひもせずに、やがて緑樹の欝蒼こんもりと生ひ茂つた、月の光の満足にさしとほらぬ、少しく小暗をぐらい阪道へとかゝつて来た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
前の空地あきちの二、三本の木立も、先生のお庭のものだったほど広い一角で、植込みの欝蒼こんもりした、ぐるりと生垣だった。抜け弁天の方の道幅が広がり、電車線路が出来るときだった。
古い暦:私と坪内先生 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
涼しい水の調しらべに耳を洗ひながら、猶三十分程も進んで行くと、前面むかふが思ひもけずにはかに開けて、小山の丘陵のごとく起伏して居る間に、黄稲くわうたうの実れる田、蕎麦の花の白き畑、欝蒼こんもりと茂れる鎮守の森
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)