桝目ますめ)” の例文
かく汝らは預言者を殺しし者の子たるを自らあかしす。なんぢら己が先祖の桝目ますめみたせ。蛇よ、まむしすゑよ、なんぢらいかでゲヘナの刑罰を避け得んや。
如是我聞 (新字新仮名) / 太宰治(著)
特別の御用金に金座から大奥お賄方まかないがたへ納めた分として一つ一つの小判の隅に、小さな桝目ますめの印が打ち出してあるのだから金輪際こんりんざい間違いっこない。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しがないやもめの船頭には、一国の宰相の死よりは、夕方の酒の桝目ますめと、あしたの米の値のほうが、遥かに実際には強くひびく。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大麦に至っては主として碾割ひきわりにして食用に供するのとこの頃は押麦にしてその儘飯に炊くのとである、碾割の方は桝目ますめにして格別殖えも減りもしないが
なぜ彼は、原稿用紙の桝目ますめのなかに一字も半画も書けないのであるか。そして毒瓦斯ガスの試験台に採用された囚人のように、意気甚だ銷沈しているのであるか。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ロール半紙を原稿紙風に桝目ますめを刷って、それを長くつないだものが、この人たちの表道具だった。それに対して、学校出の若い連中は、四角いザラ紙に鉛筆だった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
横には桝目ますめの仕切り板もあることだから、わざわざ三人の真中を割って通らなくてもよさそうなのに、幇間風たいこもちふうの男が無遠慮にも小芳の肩を乗りこえて、ひょいと大きく跨ぎながら通り越しました。
「右へ廻れ、左へ廻れ、前へ行け、後ろへ行け、桝目ますめ構わずはかれ金銀」
白光 (新字新仮名) / 魯迅(著)
奥羽おううで一般にいっパイと謂い、九州ではゴひとつと称えたのは、ともに今日の桝目ますめの約二ごうしゃくであった。是が一人扶持いちにんぶちの五合を二つに分けて、朝夕かたけずつ食わせた痕跡であることは疑いが無い。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そうよ冗談じゃねえぜ。それに安、お蔦あ桝目ますめを打った小判で五百両も持ってるから、なあ手前の考えそうなこった」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これこれお前は、どうも穀物渡世こくもつとせいをしているようだが、桝目ますめけずって金銭をむさぼるような様子が見える。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小判には桝目ますめの印が打ってある。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)