桐胴きりどう)” の例文
綺麗にならされた桐胴きりどうの火鉢の白い灰が、底冷えのきびしい明け方ちかくの夜気に蒼白あおざめて、酒のさめかけた二人の顔には、深い疲労と、興奮の色が見えていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
丸い桐胴きりどうの火鉢の向うから私と一緒に御覧になるのが何よりのお楽しみのように見えました。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「そう?——寒いのね」うやうやしく座ぶとんをすすむるおんなをちょっと顧みて、浪子のそば近くすわりつ。桐胴きりどう火鉢ひばち指環ゆびわの宝石きらきらと輝く手をかざしつつ、桜色ににおえるほおおさう。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
でう座敷ざしきに六まい屏風びやうぶたてゝ、おまくらもとには桐胴きりどう火鉢ひばちにお煎茶せんちや道具だうぐ烟草盆たばこぼん紫檀したんにて朱羅宇しゆらう烟管きせるそのさま可笑をかしく、まくらぶとんの派手摸樣はでもやうよりまくらふさくれなひもつねこのみの大方おほかたあらはれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)