枯蓮かれはす)” の例文
石にはこけが薄青く吹き出して、灰を交えたむらさきの質に深く食い込む下に、枯蓮かれはすじくがすいすいと、去年のしも弥生やよいの中に突き出している。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その葦の枯葉が池の中心に向って次第にまばらになって、只枯蓮かれはす襤褸ぼろのような葉、海綿のようなぼう碁布きふせられ、葉や房の茎は、種々の高さに折れて、それが鋭角にそびえて
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
人通ひとどおりも早や杜断とだえ池一面の枯蓮かれはすに夕風のそよぎ候ひびき阪上さかうえなるあおいの滝の水音に打まじりいよ/\物寂しく耳立ち候ほどに、わが身の行末にわかに心細くあいなり土手ぎわの石に腰をかけ
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
枯蓮かれはすもばらばらと、折れた茎に、トただ一つ留ったのは、硫黄いおうヶ島の赤蜻蛉あかとんぼ
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
音づれてさびしきものは枯蓮かれはすのうら葉たたきて行く時雨かな
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
虹橋の下には、枯蓮かれはすの葉がからから鳴っていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
枯蓮かれはすの池に横たふ暮色かな
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)