くだもの)” の例文
さも手がだるいと云ふ風に、持つてゐたくだものく小刀を、Wの上に冠のある印の附いたさかづきの縁まで上げて一度ちいんと叩いた。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
まけにそれを洒々落々しゃしゃらくらくたる態度で遣ってける。ある時ポルジイはプリュウンというくだものの干したのをぶら下げていた。
魚蝋ぎよらふの烟を風のまにまに吹きなびかせて、前に木机を据ゑ、そが上に月桂ラウレオの青枝もて編みたる籠に貨物しろものを載せたるを飾りたるは、肉ひさぐ男、くだもの賣る女などなり。
それにトマトや西瓜や、人の目をひく色濃い夏のくだものは大方場退ばひけになつて、淡々しい秋の果がボツ/\ならべられてある。水に流された梨子なしを大山に盛つて附木の札を立ててあつた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
その表現は或る意味に於て実社会と直接交渉が無いのでありますからとがむべきではありませぬが、その他の人々は遺憾ながら知恵のくだものを盗み過ぎて食傷した猿と評する外ありませぬ。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
子供は楽しげに粔籹おこしごめやら、したくだものやらを食べはじめた。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この分けかたは、既に我空想をび起して、これを讀まんの願は、我心に溢れたり。されどダンテは禁斷のくだものなり。その味は、ぬすむにあらでは知るに由なし。