ひら)” の例文
そこに、白鳥はくてう抜羽ぬけはひら白帆しらほふねありとせよ。蝸牛まい/\つぶろつのして、あやつるものありとせよ、青螽あをいなごながるゝごと発動汽艇はつどうきていおよぐとせよ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我見しに、かの光の奧には、あまねく宇宙にひらとなりて分れ散るもの集り合ひ、愛によりてひとつまきつゞられゐたり 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
われは此一ひらの紙を手にとりしこと幾度なるを知らねど、いつも評語をのみ讀みつれば、アヌンチヤタの事を書ける雜報あるには心付かざりしなり。
わづかに畳三ひらばかり鋪ける、ささやかなる所に、九人押し合ひてゐたり。あかしさへ置きたれば、いよゝせばきに、をさなきものねむたしとて、並みゐる正中たゞなかに足踏み伸して臥す。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「いとつややかなる板の端近う、鮮やかなる畳一ひら、かりそめにうち敷」いたところに、「三尺の几帳、奥のかたに押し遣」って、うす紫の裏の濃い着物を「かしらこめて、ひき着て」寝ている。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)