未申ひつじさる)” の例文
ちょうど石廊岬いろうざきの端をかわし、右に神子元島みこもとじま地方じかたが見えかかるころ、未申ひつじさるの沖あいに一艘の船影が浮かびあがって来た。
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
天頂より未申ひつじさる、ややとりに寄るフン……と? よし、これだな。今井君、そこの岩に登って下さい。たしかこの辺から真壁の町の灯が見える筈だ。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
そこから暗剣殺は未申ひつじさるの方角、背戸口の暗黒やみに勘次を忍ばせておいて、藤吉は彦を引具し、案内も乞わずにはいり込んだ。
戌亥いぬいへ向いて参らなければならないのに、この舟はいま未申ひつじさるの方へ向いて進んでいるのです、これでは竹生島へ着きません
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(ほうほうとは火事の時に呼ぶ声なり)すは火事よとて起き出でて見るに火の手は未申ひつじさるに当りて盛んに燃えのぼれり。
わが幼時の美感 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
はうきから辰巳たつみ、鎌の鼻から未申ひつじさるくはの耳から戌亥いぬゐ、口の中の眼——と讀むんだらうな。どうだ分つたか、八」
秀郷、貞盛、為憲は兵を三手みてに分つて巧みに包囲した。玄明等大敗して、下野下総ざかひより退いた。勝に乗じて秀郷の兵は未申ひつじさるばかりに川口村に襲ひかゝつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
天頂より未申ひつじさる、稍々とりに寄るフン……と? よし、これだな。今井君、そこの岩に登って下さい。たしかこの辺から真壁の町の燈が見える筈だ。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
未申ひつじさるのあたりに月があって、外面そともをかなり明るく照していましたから、老人の眼にもはっきりとわかります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其處からくはの柄三尺八寸の寸法で三三が九つ、つまり二十四尺二寸だけ未申ひつじさる(南西)の方へ行くと、其處に大きな捨石すていしが一つある。その戌亥いぬゐ(西北)が空井戸だ。
その凶は暗剣殺で未申ひつじさる——西南——の方、これを本命ほんめい二黒土星で見れば未申は八白の土星に当るからこんとなる。卦からいうと坤為こんいといってこの坤という字は土である。
はうき辰巳たつみで、かま未申ひつじさる——なんてえのは三世相にもないよ。ところで一寢入りして出かけようか」
裏鬼門の未申ひつじさるになんにも無いといふのは變だ、——といふので、江戸に吉原を開いた、庄司しやうじ甚内の子孫、庄司三郎兵衞といふ大金持が、目黒のお不動樣の近くに住んでゐるが