木末こずえ)” の例文
棕櫚しゅろの木はつい硝子ガラス窓の外に木末こずえの葉を吹かせていた。その葉はまた全体もらぎながら、こまかにけた葉の先々をほとんど神経的にふるわせていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
粕谷八幡はさしてふるくもないので、大木と云う程の大木は無い。御神木と云うのはうられた杉の木で、此はやしろうしろで高処だけに諸方から目標めじるしになる。烏がよく其枯れた木末こずえにとまる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そよ吹く風は忍ぶように木末こずえを伝ッた、照ると曇るとで雨にじめつく林の中のようすが間断なく移り変わッた、あるいはそこにありとある物すべて一時に微笑したように、くまなくあかみわたッて
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
風やや起こりて庭の木末こずえを鳴らし、雨はぽっつりと白糸のおもてを打てり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
木末こずえ一葉ひとはだに動くことなし。5885
それはどこかの庭をえがいた六号ばかりの小品しょうひんだった。白茶しらちゃけたこけおおわれた木々と木末こずえに咲いた藤の花と木々の間にほのめいた池と、——画面にはそのほかに何もなかった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)