暴風はやて)” の例文
その方にチラリと眼を奪われた瞬間に、虚空をつんざく非常汽笛と、大地を震撼する真黒い音響とが、私の一尺横を暴風はやてのように通過した。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
これ東南寸雪すんせつの国の事也、北方丈雪ぢやうせつの国我が越後の雪ふかきところの雪吹は雪中の暴風はやて雪を巻騰まきあぐるつぢかぜ也。雪中第一の難義なんぎこれがために死する人年々也。
『鮒ですよ。たなごは小さくて相手に足りないし、沙魚はぜも好いですが、暴風はやてが怖いので……。』と、三種を挙げて答へぬ。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
乗合のりあい話好はなしずき爺様じいさんて、それが言ッたよ。上手な船頭は手先でぐ。巧者こうしゃなのは眼でぐ。それが名人となると、はらぐッ。これはおおいにそうだろう。沖で暴風はやてでもッた時には、一寸先は闇だ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まぼろしは 暴風はやてめく
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
此時はかならず暴風はやて力をそへて粉にくだきたる沙礫こじやりのごとき雪をとばせ、白日も暗夜あんやの如くそのおそろしき事筆帋ひつしつくしがたし。
此時はかならず暴風はやて雪をきちらし、凍雲とううんそらしき白昼はくちう立地たちどころ暗夜あんやとなる事雪頽なだれにおなじ。