明笛みんてき)” の例文
歳太郎は子供のときから明笛みんてきや流行唄などを上手うまくうたったが、こんな処へ墜ちてきた自分をいつもかれの前ではさげすんでいたのである。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
私の下の方の妹たちが通りかかりにのぞいて見たら、広い店中祭壇にして、片側に楽人がならび、明笛みんてきだの、和琴わごんだの交って、その中には湯川一族の
月の良い夜など明笛みんてきの音が聞えて来ると、あれ加藤の小父さんだよと子供の云うのを聞き、私も一緒に明治時代の歌を一吹き吹きたくなったものである。
睡蓮 (新字新仮名) / 横光利一(著)
月琴げっきんの師匠の家へ石が投げられた、明笛みんてきを吹く青年等は非国民としてなぐられた。改良剣舞の娘たちは、赤きたすき鉢巻はちまきをして、「品川乗出す吾妻艦あずまかん」とうたった。
花曇りに暮れを急いだ日はく落ちて、表を通る駒下駄の音さえ手に取るように茶の間へ響く。隣町となりちょうの下宿で明笛みんてきを吹くのが絶えたり続いたりして眠い耳底じていに折々鈍い刺激を与える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして月琴を彈く者もあれば、明笛みんてきを吹く者もあり、姉妹がまた其がいけたので、やかましい合奏は十一時十二時まで續いた。母親はこツそり其の騒をけて翌日あすの米の心配に來たことも往々ま/\あツた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
明笛みんてきはひやるろほろろと吹きいでてすべしらぬかなや指をるすべ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
近くなったので勝川おばさんは涼みながら来ては、蛇三味線じゃみせんを入れるの、明笛みんてきも入れるのと話していた。
明笛みんてき竹紙ちくしすらだに舌ねぶる鼠なりきやひやぶりける
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)