早駕籠はやかご)” の例文
旅籠屋をさして帰って行く半蔵らのそばには、昼夜の差別もないように街道を急いで来て、また雪をって出て行く早駕籠はやかごもある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
崖から落ちて行方不明になったという大変な話を聴き、番頭の要助さんと一着に、早駕籠はやかごですぐ江戸へ取って返したようなわけでございます
さっそうとして、蝋色鞘ろいろざやをにぎりとると、飛ばしに飛ばせて早駕籠はやかごを乗りつけたところは、いうまでもなく駒形河岸の二三春の住まいでした。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「いや、私は夜道をする。大病人を見舞の為だ。事に依ると早駕籠はやかごにするか。兎に角夜通しで江戸へ行く」
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
練塀小路ねりべいこうじの湯屋を出たのはたしかに、その人であったに相違ないけれど、早駕籠はやかごの行先はわかりません。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見んとて群集むれつどふ老若男女おしなべてあはれの者よ不便ふびんやと云ぬ者こそなかりけれかゝる所に向ふよりして早駕籠はやかごちやうワヤ/\と舁來かききたり人足どもは夫御早なり片寄々々かたよれ/\御用々々と聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これらの周囲の形勢に迫られてか、大垣あたりの様子をさぐるために、奥筋の方から早駕籠はやかごを急がせて来る木曾福島の役人衆もあった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ほとんどその片鱗へんりんをさえ伝えようとしなかったものでしたから、いよいよ右門が疑いの雲を深めているとき、通しの早駕籠はやかごかなんかで勢いよく駆け帰ってきたものは
「飛脚が気をきかしてくれたんですよ。親分の手紙を見ると、早駕籠はやかごで、夜昼おっ通しに飛んで来たが、あんまり急いで、小田原の旅籠屋の目印を見落すところでしたよ」
ある腕のいた浪人者で、それがお蘭さんとかねて出来ていて、お蘭さんが手引をしてあんなことをさせ、そうしてあらかじめ早駕籠はやかごを用意して置いて、人が追いかける時分には
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こばめば主人長門守爲にも相成あひなるまじき段屹度きつと申渡しかつみぎかゝりの諸役人迄のこらず迅速すみやかに出府致す樣に申渡すべし早々急げと云れしかばかしこまり候とて牧野小左衞門は吉原宿じゆく役人に早駕籠はやかごちやう申渡し其夜の子刻過こゝのつすぎに吉原宿を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのために、中津川地方にはその人ありと知られた小野三郎兵衛が名古屋表へ昼夜兼行で早駕籠はやかごを急がせたということをも知った。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
飛脚ひきやくが氣をきかしてくれたんですよ。親分の手紙を見ると、早駕籠はやかごで、夜晝おつ通しに飛んで來たが、あんまり急いで、小田原の旅籠屋の目印めじるしを見落すところでしたよ」
珍しく気のきいた大働きで、ちゃんともう用意しておいた早駕籠はやかごに名人を押し込めながら、鼻高々と案内していったまではおてがらでしたが、やっぱりこの辺が伝六流です。
早駕籠はやかごで……
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
時には、三ちょう早駕籠はやかごが京都方面から急いで来た。そのあとには江戸行きの長持が暮れ合いから夜の五つどき過ぎまでも続いた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは疑いすらもかけるべき余地がないので、ただちに右門は一日通しの早駕籠はやかごを仕立てさせると、いよいよ本式に、下町は伝六の受け持ち、山の手は右門自身が立ち回ることにして
尾州方びしゅうかたの役人は美濃路から急いで来る。上松あげまつの庄屋は中津川へ行く。早駕籠はやかごで、夜中に馬籠へ着くものすらある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もはや御一行が江州ごうしゅう草津くさつまで動いたという二十二日の明け方になって、吉左衛門は夜通し早駕籠はやかごを急がせて来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)