敗頽はいたい)” の例文
いはゞ世紀末的な敗頽はいたいの底を潜つて、何か清新なものをつかまうとあさつてゐる、おいと若さと矛盾むじゅんしてゐる人間に見えた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
天床、畳、壁、障子、襖、小さな天地ではあるけれども、すべ敗頽はいたい衰残すゐざんの影が、ハツキリと眼に映る。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
○軍は段違いのスコアで△軍をほふった。二年間負け続けて先輩から風紀敗頽はいたいそしりを受けていた折からの快勝に、嬉しさ余った選手達は相擁して泣き出すという始末。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一度ひとたびその秘戯画に現はれたる裸体画を検するものはその骨格の形状正確にして繊巧を極めし線の感情の敗頽はいたい的気風に富めるそぞろに歌麿を思はしむる所あるを知るべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
予が新銭座しんせんざたくと先生のじゅくとは咫尺しせきにして、先生毎日のごとく出入しゅつにゅうせられ何事も打明うちあけ談ずるうち、つね幕政ばくせい敗頽はいたいたんじける。もなく先生は幕府外国方翻訳御用がいこくかたほんやくごよう出役しゅつやくを命ぜらる。
これほど私を敗頽はいたいさせた不出来な仕事が終つてから、かなりの時間が経つてゐた。
大凶の籤 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
こうした敗頽はいたい気分に満ちている、旗本の若き武士はその夜、府中の各所に散って、白由行動を取り、翌朝深大寺じんだいじ門前の蕎麦屋そばやに会して、互いに一夜の遭遇奇談を報告し合おうとの約束であった。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)