掻消かきき)” の例文
夜陰のこんな場所で、もしや、と思う時、掻消かききえるように音がんで、ひたひたと小石をくぐって響く水は、忍ぶ跫音あしおとのように聞える。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なにかミハイル、アウエリヤヌヰチがふたのでるが、すぐみな掻消かききえてしまつた。くてアンドレイ、エヒミチは永刧えいごふめぬねむりにはいた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
猿のさけびが掻消かききえると、ぐわっ——と谷底の鳴るのが逆しまに、顔をふきあげてくる。そそり立っている岩峭がんしょうつかってくる冷たい風と、渓川たにがわのうなりである。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜陰やいんのこんな場所で、もしや、と思ふ時、掻消かききえるやうに音がんで、ひた/\と小石をくぐつて響く水は、忍ぶ跫音あしおとのやうに聞える。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なにかミハイル、アウエリヤヌイチがうたのであるが、すぐみな掻消かききえてしまった。かくてアンドレイ、エヒミチは永刧えいごうめぬねむりにはいた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぞろぞろ立って大きな伽藍がらん睡窟すいくつへ思い思いに掻消かききえると、後は三、四人の堂衆だけが残って、喰い散らした麦煎餅むぎせんべいの欠けらを掃いたり、短檠たんけいを片づけたりしていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云うかと思えば、掻消かききえるように、静山の姿はもう見えない。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)