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拈出
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ねんしゅつ
ふりがな文庫
“
拈出
(
ねんしゅつ
)” の例文
退院後一カ月
余
(
よ
)
の
今日
(
こんにち
)
になって、過去を
一攫
(
ひとつかみ
)
にして、眼の前に並べて見ると、アイロニーの一語はますます鮮やかに頭の中に
拈出
(
ねんしゅつ
)
される。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
最後に一寅次の名を
拈出
(
ねんしゅつ
)
して曰く、これ三千石を過ぐべからず、過ぐれは則ち叛かんと。ああ一老生及びその主とその賓と、みな余が平生のいわゆる知己なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
純一は大村の詞を聞いているうちに、名刺を発見せられはすまいかと思う心配が次第に薄らいで行って、それと同時に大村が青い鳥から
拈出
(
ねんしゅつ
)
した問題に引き入れられて来た。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
いずれにもせよ、今まで俳句界に入らざりし古語を手に従って
拈出
(
ねんしゅつ
)
したるは蕪村の力なり。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
農家の人々から見たら、あるいは平凡な事柄であるかも知れぬが、こういう句は机上種浸の題を
按
(
あん
)
じただけで
拈出
(
ねんしゅつ
)
し得るものではない。実感より
得
(
え
)
来
(
きた
)
った、
工
(
たく
)
まざるところに妙味がある。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
▼ もっと見る
わが見るは動く世ならず、動く世を動かぬ物の
助
(
たすけ
)
にて、よそながら
窺
(
うかが
)
う世なり。
活殺生死
(
かっさつしょうじ
)
の
乾坤
(
けんこん
)
を
定裏
(
じょうり
)
に
拈出
(
ねんしゅつ
)
して、五彩の色相を静中に描く世なり。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いづれにもせよ、今まで俳句界に入らざりし古語を手に従て
拈出
(
ねんしゅつ
)
したるは蕪村の力なり。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それ故に予は次第に名を避くるということを
勉
(
つと
)
めるようになった。予が久しく鴎外漁史という文字を署したことがなくて、福岡日日新聞社員にこれを
拈出
(
ねんしゅつ
)
せられて一驚を喫したのもこれがためである。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「かぶりもふらぬ」という中七字を
拈出
(
ねんしゅつ
)
したのであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
同時に火の消えた瞬間が露子の死を未練もなく
拈出
(
ねんしゅつ
)
した。
額
(
ひたい
)
を
撫
(
な
)
でると
膏汗
(
あぶらあせ
)
と雨でずるずるする。余は夢中であるく。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いたずらにこの境遇を
拈出
(
ねんしゅつ
)
するのは、
敢
(
あえ
)
て
市井
(
しせい
)
の
銅臭児
(
どうしゅうじ
)
の
鬼嚇
(
きかく
)
して、好んで高く
標置
(
ひょうち
)
するがためではない。ただ
這裏
(
しゃり
)
の
福音
(
ふくいん
)
を述べて、縁ある
衆生
(
しゅじょう
)
を
麾
(
さしまね
)
くのみである。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自然主義もやられる、社会主義も
叩
(
たた
)
かれる。すべての主義が彼の眼から見て存在の権利を失ったかのごとくに説き去られた時、彼は始めて精神生活の四字を
拈出
(
ねんしゅつ
)
した。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この気分を構成する一部一部は、非我の世界にこれに相応する形相を発見しもしくは想像する事ができますが、この全体の気分に応じたものを客観的に
拈出
(
ねんしゅつ
)
しようとするととうてい駄目であります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
拈
漢検1級
部首:⼿
8画
出
常用漢字
小1
部首:⼐
5画
“拈”で始まる語句
拈
拈華微笑
拈定
拈香
拈花
拈華瞬目
拈弄
拈繰
拈華
拈轉