披露目ひろめ)” の例文
「ええええ、その方はもう——じつはまだ祝言前ですからお披露目ひろめも致しませんが、許婚いいなずけの婿も決まっておりまするようなわけで、へえ。」
ともかく当分自前でかせぐことにして路次に一軒を借り、お袋や妹に手伝ってもらって、披露目ひろめをした。案じるほどのこともなく、みんなが声援してくれた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかも披露目ひろめの日の冷汗を恥じて、俊吉の膝に俯伏うっぷした処を、(出ばな。)と呼ばれて立ったのである。……
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流行妓はやりっこになるのも、よいねえさんになるのも、お披露目ひろめに出た時、女将の目にとまって、具合よく引っぱり廻され、運の綱を握るようにしむけてくれるからである。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
和泉屋の晴れの披露目ひろめとあって、槙町まきちょう亀屋かめやの大浚えにはいつもの通り望月が心配して下方連を集めて来たまでは好かったが、笛を勤めるのが乗物町の名人又七と聞いて
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「何んにもならない、——ところでお前は、その巴屋の披露目ひろめに来たわけじゃあるまい」
披露目ひろめをするといってもまさか天婦羅を配って歩くわけには行かず、祝儀しゅうぎ衣裳いしょう、心付けなど大変な物入りで、のみこんで抱主かかえぬしが出してくれるのはいいが、それは前借になるから
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
この話が伝わると、誰が発起ほっきともなく、養生所の新築披露目ひろめをかねて、一つ、希有けう大与力だいよりきの隠退を記念する捕縄供養とりなわくようをやろうではないか——イヤ、やらせようではないか、とはたから騒ぎだした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小楽に暮らしている小父おじさんがおったが、不断可愛かわいがられていたので、暇乞いとまごいに行くと、何がしかの餞別せんべつを紙にひねってくれ、お披露目ひろめをしたら行ってやるから
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
本所の家の隣のおじさんと、気分の似たところもあって、小菊には頼もしく思われ、来るのが待ち遠しかった。赤坂で披露目ひろめをした時も一ト肩かつぎ、着物の面倒も見てくれた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ちやうど彼女も二千円ばかりの借金を二年半ばかりで切つてしまつて、やつと身軽な看板借りで、山の手から下町へ来て披露目ひろめをした其の当日から、三日にあげず遊びに来た木山は
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)