投遣なげやり)” の例文
いえば、投遣なげやりな、大ざっぱな、ぶッきら棒なその仲間たちのあいだを縫って、はつらつと、若鮎のようにかれは閃いた。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
何アに大丈夫だ、人の娘を預って監督せずに投遣なげやりにしてはおかれん。男がこの東京に来て一緒に歩いたり何かしているのを見ぬ振をしてはおかれん。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
無智や無頓着や屈従やあきらめや投遣なげやりから現実をそのままに受容れることをやめて、少しでも自分自身や社会をよくしようという希望と努力とがすべての人に生れてくるときに
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
これがをつとだと、何時迄いつまでだまつてはりうごかすのが、御米およねれいであつたが、相手あいて小六ころくときには、さう投遣なげやり出來できないのが、また御米およね性質せいしつであつた。だからそんなときにはつとめてもはなしをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
貰乳もらいちちをして育てていると、やっと四月よつきばかりになった時、江戸中に流行はやった麻疹はしかになって、お医者が見切ってしまったのを、わたしは商売も何も投遣なげやりにして介抱して、やっと命を取り留めた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
小野田は、お島の投遣なげやりなのをもどかしそうに言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
これが夫だと、いつまでも黙って針を動かすのが、御米の例であったが、相手が小六の時には、そう投遣なげやりにできないのが、また御米の性質であった。だからそんな時には力めても話をした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下女はお上さんがあんなでは困ると、口小言を言いながら、下手の乗っている馬がなまけて道草を食うように、物事を投遣なげやりにして、鼠入らずの中でさかなが腐ったり、野菜が干物になったりする。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)