手曳てびき)” の例文
それで彼等かれらよる時刻じこくると、目明めあき手曳てびきがだんだんと家々いへ/\くばつてあるく。さうしては手曳てびきがそれをあつめてれてかへつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
で、地獄の手曳てびきめ、急に衣紋繕えもんづくろいをして下りる。しばらくして上って来た年紀としわかい十六七が、……こりゃどうした、よく言う口だが芥溜はきだめに水仙です、鶴です。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうです。甲府町方の目をくらますため、日本左衛門がこッそりとかくれている穴です。実あ、そこへあなたを手曳てびきするつもりで、お粂もここまで誘い出しておきましたので」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父親は台湾とやら所在分らず、一人有ったが、それも亡くなった叔父の女房で、蒟蒻島こんにゃくじまで油揚の手曳てびきをしていた。余り評判のよくない阿婆おばあが、台所だいどこから跨込またぎこんで、帳面を控えて切盛する。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)