手々てんで)” の例文
それらの人は、どこかこの近辺の温泉場へでも遊びに行って来たものらしく、汽車が動きだしてからも、手々てんでにそんな話にふけっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふるびついたる戟共ほこどもおなじく年老としおいたる手々てんでり、汝等なんぢらこゝろびつきし意趣いしゅ中裁ちゅうさいちからつひやす。
母屋では、最早もう仕度が出来たと見え、棺が縁の方にき出された。柿の木の下では、寝た者も起き、総立になった。手々てんでに白張提灯を持ったり、紙のはたを握ったり、炬火たいまつをとったりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と妻がう。ペンをさしおいて、取あえず一わんかたむける。銀瓶ぎんびんと云う処だが、やはりれい鉄瓶てつびんだ。其れでも何となく茶味ちゃみやわらかい。手々てんでに焼栗をきつゝ、障子をあけてやゝしばし外を眺める。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)