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戸前
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とまえ
ふりがな文庫
“
戸前
(
とまえ
)” の例文
そう言い捨てて闇だまりから立ちあがると、のそのそと土蔵の
戸前
(
とまえ
)
へ近づいて行って錠をはずし、拳でトントンと土扉をたたきながら
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
店と聞いていたが、
暖簾
(
のれん
)
も看板も懸けてはない。
渋
(
しぶ
)
で塗った三間の出格子に、
二
(
ふ
)
た
戸前
(
とまえ
)
の土蔵がつづき、その他は高塀で取り
繞
(
めぐ
)
らしてある。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は冷たい風の吹き通す土蔵の
戸前
(
とまえ
)
の
湿
(
しめ
)
っぽい石の上に腰を掛けて、古くから家にあった
江戸名所図会
(
えどめいしょずえ
)
と、
江戸砂子
(
えどすなご
)
という本を物珍しそうに眺めた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
半七は確かにそれと見きわめながらも、まさかにつかつか踏み込んで出しぬけに土蔵の
戸前
(
とまえ
)
をあけるわけには行かないので、もう少し確かな証拠を握りたいと思った。
半七捕物帳:20 向島の寮
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
三年と五年の
中
(
うち
)
にはめきめきと
身上
(
しんしょう
)
を仕出しまして、
家
(
うち
)
は建て増します、座敷は
拵
(
こしら
)
えます、
通庭
(
とおりにわ
)
の両方には
入込
(
いりごみ
)
でお客が一杯という
勢
(
いきおい
)
、とうとう蔵の二
戸前
(
とまえ
)
も
拵
(
こしら
)
えて
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
神田から出た
北風
(
ならい
)
の火事には、
類焼
(
やけ
)
るものとして、
蔵
(
くら
)
の
戸前
(
とまえ
)
をうってしまうと店をすっかり空にし、裸ろうそくを立てならべておいたのだという、妙な、とんでもない
巨大
(
おおき
)
な
男店
(
おとこだな
)
だった。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「はい。直き
一間
(
ひとま
)
先きに、
戸前
(
とまえ
)
の廊下に続いている蔵がございます。」
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
殊に西洋
戸前
(
とまえ
)
ある押入の中に堅く閉籠りし事なれば其戸を開く迄物音充分聞えずして目を覚さずに居たる者なり
夫
(
それ
)
は
扨置
(
さてお
)
き妾は施寧が躍出るを見て
転
(
ころが
)
る如くに二階を降しが、金起は流石に男だけ
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ふと、蔵の
戸前
(
とまえ
)
をふり仰いで、そこの
鉄錠
(
てつじょう
)
がはずされているのを見つけるや否
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僕等がちょうど二丁目の角へ来ると、
伊勢源
(
いせげん
)
と云う呉服屋の前でその男に出っ食わした。伊勢源と云うのは間口が十間で
蔵
(
くら
)
が
五
(
い
)
つ
戸前
(
とまえ
)
あって静岡第一の呉服屋だ。今度行ったら見て来給え。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうでしょう、これから官庫の
戸前
(
とまえ
)
を開けて、男の歓心を買おうとするお蝶が、それくらいのことで、いちいち心臓を息づまらせていたひには、この暗さだけにも堪えられたものではない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蔵の
戸前
(
とまえ
)
を引いてみたり揺すぶッてみたり、苦しみぬいている様子。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戸
常用漢字
小2
部首:⼾
4画
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
“戸前”で始まる語句
戸前口