態〻わざわざ)” の例文
或日、団さんが態〻わざわざ僕の席へ来て、晩餐招待の口上を述べた。大谷君も清水君も手近にいたけれど、僕一人が案内を受けたのだった。
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このことは興信所の報告にもぼんやりにおわしてあったけれども、に落ちかねる点があったので、此方から態〻わざわざ人をって間違いのないところを調べ上げたのである。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
地図は持っているが、田鶴子たずこさんにしても僕にしてもそれを人中ひとなかで拡げて見て態〻わざわざお上りさんの広告をする気になれないから不便だ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あれはぐ私から瀬越さんの方へお届け申しましたが、ああ云う明細な報告書と、ことにレントゲン写真までああして態〻わざわざお撮り下さいましたので、大変恐縮しておられまして
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
揶揄やゆ一番した。ナカ/\たちが悪い。態〻わざわざ二流会社を志望する僕達は決して優秀でないから、くすぐったいような心持で顔を見合せた。
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いつも写す所では必ず写して行くのであったが、此処ここでも彼女たちの一行は、毎年いろいろな見知らぬ人に姿を撮られるのが例で、ていねいな人は態〻わざわざそのむねを申し入れて許可を求め
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「冗談は措いて、僕達は佐賀のことを調べに態〻わざわざ東京からやって来たんだからね、お給仕をしながら一つゆっくりと話してお呉れ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「母校の復興資金ふっこうしきんのことで態〻わざわざいでになったのですから、私、今度こそは少し纒めて寄附しなければならないと思っていますの」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「世間はあなたを金万かねまんの若旦那として相応悧巧りこうな方と思っていて下さるんですから、今更態〻わざわざ自首をなさるにも及びますまい」
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と芳子さんは態〻わざわざ注進して引っ張って来たのらしかった。新太郎君は不意を打たれてお見舞いどころでなく、唯お辞儀をするばかりだった。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
祇園のには官軍戦没者の墓地がある。それを態〻わざわざ弔いに行ったのではなかったが、結果は要するにそんなことに帰着した。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「これはしたり。娘は誰に憎まれているのだろう? 憎むものゝないように態〻わざわざ姑のないところを選んだのだが、不思議なこともあればあるものだ」
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
態〻わざわざどやされて家へ向った。浜口君は武骨もので、私が清子さんのことを言い出すと、腕力に訴える外に能がない。
恩師 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
態〻わざわざ彼処まで見に行くようなら、もう疑問の余地はない。しかし再び待ち呆けを食わされるようなら、万事休す。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
成績発表直後、態〻わざわざ僕のところへ談判に来たのだった。僕としても東金君と言い合って物別れになったのはこれが初めてだったから、何となく気が咎めた。
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
長船君が自分を貰いたがっている程度も悉皆すっかり分った。それで自然に委せて置けば都合通りに事が運ぶと思っているから、態〻わざわざ口に出して言う必要を認めない。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
近所を通ったから序だと言ったが、態〻わざわざきまっている。妻を初め四人の子供を順々に褒めるんだ。一番末のは生れたばかりだぜ。余っ程馬鹿な奴だと思ったよ
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「困ったものね。私、ひょっとして、あなたが申上げるといけないと思って態〻わざわざ上って参りましたのよ」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
態〻わざわざ送って来た人が唯々諾々いいだくだくとして送られて行く。高輪から品川までは大分話しでがある。しかし二人は未だ飽き足らない。駅前に辿りついた時、俊一君は腕時計に見入って
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それは統計上避け難い害悪だ。態〻わざわざ雪の山へ登って行方不明になるのとは違う」
妻の秘密筥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と玉突台のところへ態〻わざわざ注進に来たものがあった。部屋の一隅では津島さんが
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこへ僕が態〻わざわざ首を切りに乗り込んだ。やっこさん驚かない筈さ。自殺の決心をしたものを殺しに行った形になる。余り有効な仇討ちでもなかったけれど、相手を困らせるのが目的じゃない。
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と松浦さんは態〻わざわざの訪問と思い込んだ。寛一君は揉み手をしながら進み出て
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「貰うなら兎に角、くれるのに態〻わざわざ行く法はないって。私が惜しいのよ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「水力電気の技師連中だよ。東京から大滝を見に態〻わざわざやって来たのさ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と卓造君は態〻わざわざの解釈を異にしていたものゝ、再び水力電気にのぞみしょくし始めた。百間橋から半里ばかり上流に大滝というところがある。川の水全体が数間の傾斜面を落下する。ナカ/\の壮観だ。
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし二三日たってから、夜分晩く僕のアパートへ訪ねて来て実情を打ち明けた。友情を誓って油断をさせる為めか、時々如何にもわだかまりないように話し込む。しかし態〻わざわざやって来たのは初めてだった。
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「はあ。態〻わざわざ御報告にいらっしゃいましたの」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とお母さんが態〻わざわざ訊きに来てくれた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「夫婦者は戦争ということが能く分っている。毎日家庭で体験して如何に悲惨なものか知り抜いているから、態〻わざわざヨーロッパまで出掛ける気になれない。然るに独身者は平和に倦きている。一つやって見ようという気にもなるのさ」
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「やあ。これは態〻わざわざ何うも」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
態〻わざわざ有難う」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)