愍笑びんしょう)” の例文
みなアルコール気のないカクテルという註文に、ミス神戸たちから愍笑びんしょうを買う。西銀座、土橋界隈とくらべて、やはり神戸を感じる。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かえりみて我が身の出処でどころたる古学社会を見れば、その愚鈍暗黒なる、ともに語るに足るべき者なく、ひそかにこれを目下に見下して愍笑びんしょうするのみ。
かほど金になる女身を受けて空しく石となった松浦佐夜姫まつらさよひめ愍笑びんしょうせんばかり。
腹のなかで愍笑びんしょうしながら、彼はトボけた顔したまま、木戸の外へ出た。身をわすやいな、外から錠をおろして大股に立ち去った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この輩が不文ふぶん野蛮と称して常に愍笑びんしょうする所の封建時代にありても、決して許されざりし不品行を今日に犯し、てんとしてずるを知らざるものなきにあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
関羽の前には、魏の総司令于禁うきんも捕虜になって引っ立てられて来た。于禁は哀号して、助命をすがった。関羽は愍笑びんしょうして
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れを乞食のように人に泣付なきついて修業をさせて貰うとはさても/\意気地のない奴共だと、心ひそかこれ愍笑びんしょうして居ながら、私にも男子が二人ふたりある、この子が十八
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いらざるおせッかいといわぬばかりに、愍笑びんしょうをくれたので、新田の老臣は、顔あからめて、あの時は退ッこみおった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外国とほこさきを争いてごうも譲ることなく、今より数十の新年を経て、顧みて今月今日の有様を回想し、今日の独立を悦ばずしてかえってこれを愍笑びんしょうするの勢いに至るは、あに一大快事ならずや。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「いや、それをわらうのではない。余りといえば黄蓋こうがいが、曹操などという人物を買いかぶっているのを愍笑びんしょうしたまでだ」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、あまりに諸賢が、愚かしき噂を信じているから、その幼稚なのに愍笑びんしょうをもらしたのだ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、その人は、軽侮と愍笑びんしょうぜて言った。その言に、むッとしたか、突如、えるように
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、家財調度を目づもりして、大盗らしい愍笑びんしょうをくれながら、また
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『おまえなど……』と、清盛は、思わず愍笑びんしょうした。
仲時は愍笑びんしょうをふくんだ。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
愍笑びんしょうを、禁じえない。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)