心地きもち)” の例文
径は渓間たにまの方へ低まって往った。丹治は眼を渓の下の方にやろうとした。赤いもやが眼の前を飛ぶような心地きもちがした。
怪人の眼 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
色々考えると厭悪いや心地きもちがして来た。貧乏には慣れてるがお源も未だ泥棒には慣れない。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
階段はしごとどろと上る足音障子の外に絶えて、「ああいい心地きもち!」と入り来る先刻の壮夫わかもの
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
するとたちまあいちやんはめう心地きもちがしてたので、うしたことかとはなは不審ふしんおもつてますと、たもや段々だん/\おほきくなりはじめました、あいちやんは最初さいしよあがつて法廷ほふていやうとしましたが
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
捕卒の一人は後退しりごみする彭を判官の前へ引き据えた。彭はどんな目にあわされることかと思って生きた心地きもちがしなかった。
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
南は賤しい農民の女と結婚するのは困ると思ったが、女の心地きもちこわばらしては面白くないので、頷いて見せた。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
主人は急いでほうきを持って室の中を掃いた。南は主人が自分を尊敬してくれるので悪い心地きもちはしなかった。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
杜陽は紅い霞に包まれているような心地きもちになっていた。その杜陽の眼に結婚の祝いにくる数十軒の親類の人達が映ったが、皆金のある身分のある人ばかりのようであった。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「まいりますがね、お媽さんの心地きもちは、何ともありませんか」
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)