御物ぎょぶつ)” の例文
その男はこの間参考品として美術協会に出た若冲じゃくちゅう御物ぎょぶつを大変にうれしがって、その評論をどこかの雑誌に載せるとかいううわさであった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一般に上流諸家から秘蔵品並びに宮内省御物ぎょぶつ等をも拝借し、各種にわたった名画名器等を陳列し、それを一般に縦覧を許すことにしました。
紫宸ししん清涼せいりょう弘徽殿こきでんなどになぞらえられていた所の一切の御物ぎょぶつ——また昼の御座ぎょざの“日のふだ”、おん仏間の五大尊の御像みぞう
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またもし千数百年前に渡っていて、これが勿体もったいないたとえではあるが、仮に正倉院しょうそういん御物ぎょぶつに混っていたとしても、何人なんぴともその価値を疑わないに違いない。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かしこしとも畏こし、帝室の御物ぎょぶつと唐室の御物とを、一つにつなぎ合わせた稀代の逸品という触れこみなのさ。
この琴は宮中の宜陽殿ぎようでんに納めておかれた御物ぎょぶつであって、どの時代にも第一の名のあった楽器であったが
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
鼓村氏は、浜子が体が弱いので、転地ばかりしているから、その時持ってゆくのに具合のい、寸づまりで、幅の広い箏を、正倉院しょうそういん御物ぎょぶつかたちを模して造らせた話をした。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その時参考品御物ぎょぶつの部に雪舟せっしゅう屏風びょうぶ一双いっそう琴棋きんき書画をえがきたりと覚ゆ)あり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いずれにしても天平てんぴょうのころからあったということは光明皇后から東大寺へ御寄進なされました御物ぎょぶつを拝見いたしましてもうなずけることでございましょう
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔は陽成ようぜい院の御物ぎょぶつだったものなのだがね。
源氏物語:37 横笛 (新字新仮名) / 紫式部(著)
御物ぎょぶつの燈籠をささげて、殿司寮でんすりょうの者、お鍵番かぎばんの者、粗相なきよう、これへ出ませい!」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)