“御為(おため)” の例文
旧字:御爲
「進もうかよそうかと思って迷っていらっしゃるが、これは御損ですよ。先へ御出(おで)になった方が、たとい一時は思わしくないようでも、末始終(すえしじゅう)御為(おため)ですから」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
... どっちみち今日の恵(めぐみ)は御為(おため)に悪いことはございません。」と座蒲団(ざぶとん)を撥(は)ねて、「これは早朝から御邪魔申しました。それではなりたけお早く御出(おいで)下さいまし、一足御先へ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あなたの娘ではなしさ、きり/\此処(ここ)へ御出(おだし)なされ、七が眼尻(めじり)が上(あが)らぬうち温直(すなお)になされた方が御為(おため)かと存じます、それともあなたは珠運とかいう奴(やつ)に頼まれて口をきく計(ばか)りじゃ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
後(のち)に商業学校(せうげふがくかう)に転(てん)じて、中途(ちうと)から全然(すつかり)筆(ふで)を投(たう)じて、今(いま)では高田商会(たかだせうくわい)に出て居(を)りますが、硯友社(けんいうしや)の為(ため)には惜(をし)い人を殺(ころ)して了(しま)つたのです、尤(もつと)も本人の御為(おため)には其方(そのはう)が結搆(けつかう)であつたのでせう
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ちと仔細(しさい)があって、貴下が人は知るまいと思っている事を、私(わたくし)はよく知っております。文明国の御方にも似合わない、名誉ということを御存じがありませんか。私はむしろ貴下の御為(おため)を
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
花漬売としてこそあなたも約束をなされたれ、詰る所成就覚束(おぼつか)なき因縁、男らしゅう思い切られたが双方(そのほう)の御為(おため)かと存じます、併(しか)しお辰様には大恩あるあなたを子爵も何でおろそかに思われましょう
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)