得脱とくだつ)” の例文
兎も角もそのお住の得脱とくだつ成仏じょうぶつするように、仏事供養を営むが可かろうという事に一決して、一同その墓所へ参詣し、懇切ねんごろに回向した。
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
どれでも勝手にはしをつけてくれい。かゆばかりすすっていさえすれば、得脱とくだつするように考えるのは、沙門にあり勝ちの不量見ふりょうけんじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
永光寺の開山(名をきゝもらせり)血脉けちみやくをかのふちにしづめて化度けどし玉ひしゆゑ悪竜得脱とくだつなし、その礼とてかの墓石はかいしふちにいだして死期しきしめす。
藤沢寺とうたくじ遊行上人ゆぎょうしょうにん祐天和尚ゆうてんおしょうでも弘法大師こうぼうだいしでも有難い坊さんを大勢頼んで来て、大法事か何かして、花魁が成仏得脱とくだつさえすれば、貴方の御病気は癒るんですぜ
のち人蟒老いて死せんとする時、ぶつ舎利弗しゃりほつして往き勧めて得脱とくだつせしむ。
「うんや、ここいらを歩行あるくのに怨霊おんりょう得脱とくだつさせそうな頼母たのもしい道徳は一人も居ねえ。それに一しきり一しきりひッそりすらあ、またその時の寂しさというものは、まるで時雨がむようだ。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
永光寺の開山(名をきゝもらせり)血脉けちみやくをかのふちにしづめて化度けどし玉ひしゆゑ悪竜得脱とくだつなし、その礼とてかの墓石はかいしふちにいだして死期しきしめす。
修行しゆぎやうの淺い我々でござれば、果して奇特きどくの有る無しはお受合ひ申されぬが、兎も角も一心を凝らして得脱とくだつの祈祷をつかまつると致しませう。」
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
累が淵へむしろを敷いてかねを叩いて念仏供養を致した、其の功力くりきって累が成仏得脱とくだつしたと云う、累が死んでのち絶えず絹川のほとりには鉦の音が聞えたと云う事でございますが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
修行しゅぎょうの浅い我々でござれば、果たして奇特きどくの有る無しはお受け合い申されぬが、ともかくも一心を凝らして得脱とくだつの祈祷をつかまつると致しましょう」
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)