徒渉かちわた)” の例文
そんなおりに、思いがけなく川に出水でみずがあって、徒渉かちわたりがしにくいと、この仙人は手にさげた折畳み式の馬に水を吹きかけます。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
なれどごへんほどの大男には、容易たやす徒渉かちわたりさへならうずる。さればごへんはこれよりこの河の渡し守となつて、往来の諸人を渡させられい。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
本庄鬼六の指揮のもとに、約三十人ほどの捕兵が、加茂の東からちりぢりとなって、対岸二条の辺へ、徒渉かちわたりに渡っていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その河原の中を走る二筋のせせらぎを、今、徒渉かちわたりしている物影を、この橋の上から認めたからであります。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
むかし、支那しな莊周さうしうといふひとは、ゆめ胡蝶こてふつたとはなしがありますが、ゆめなればこそ、漫々まん/\たる大海原おほうなばら徒渉かちわたりすることも出來できます、空飛そらととり眞似まね出來できます。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
邵武しょうぶ渓河たにがわの北に怪しい男が棲んでいて、夜になると河ばたに出て来た。そうして徒渉かちわたりの者をみると、必ずそれを背負って南へ渡した。ある人がその子細を訊くと、彼は答えた。
またの名を白足びやくそく和尚と呼ばれただけあつて、足の色が顔よりも白く滑らかで、外を出歩く時雨上りの泥水の中をざぶざぶと徒渉かちわたりしても、足はそれがために少しも汚されなかつたといふことだ。
春の賦 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
またの名を白足和尚と呼ばれただけあつて、足の色が顔よりも白く滑らかで、外を出歩く時雨上りの泥水の中をざぶざぶと徒渉かちわたりしても、足はそれがために少しも汚されなかつたといふことだ。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)