後嗣こうし)” の例文
右大将が大納言を兼ねて順序のままに左大将に移り、この人も幸福に見えた。六条院は御譲位になった冷泉れいぜい院に御後嗣こうしのないのを御心の中では遺憾に思召おぼしめされた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
後嗣こうしはひとりの娘なので、両親は娘のために銀行の使用人の中から実直な青年を選んで娘の婿に取つた。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
その父前大納言慶勝よしかつが安政五年七月将軍家後嗣こうしの事に関して井伊大老のむ所となり退隠を命ぜられた時、元千代はまだ生れていなかったので、慶勝の弟茂徳しげのりが尾州家を継いだ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
松陰の妹婿まいせいにして、その同年の友たる楫取かとり男爵、その親友高原淳次郎、松陰の後嗣こうし吉田庫三くらぞうの諸君は、本書をすにおいて、あるいは助言を与えられ、あるいは材料を与えられたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
示シ朕カ後嗣こうしおよび臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行じゅんこうスル所ヲ知ラシム
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
しかし、その後には、権律師胤舜ごんりつしいんしゅんどのが、宝蔵院流の秘奥ひおうをうけ、二代目の後嗣こうしとして、今もさかんに槍術を研鑽けんさんして、多くの門下を養い、またう者はこばまずご教導も下さるとか伺いましたが
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏教興隆で有名なカニシカ王の前に初めて北インドを征服した月氏げっしの王はインドに入ると共に狂熱的なシヴァ崇拝者となった。カニシカ及びその後嗣こうしの代を過ぎて、次の王は再びシヴァ崇拝に帰った。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
父のYは旧幕の権臣の家の後嗣こうし者であつた。旧藩閥の明治の功傑たちは、新政府に従順だつた幕府方の旧権臣の家門をねぎらふ意味から、その後嗣者を官吏として取り立てた。
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
浩歎こうたんした。また、後嗣こうし光尚に宛てた書面にも
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)