弥助やすけ)” の例文
旧字:彌助
平山はきのふあけ七つどきに、小者こもの多助たすけ雇人やとひにん弥助やすけを連れて大阪を立つた。そしてのち十二日目の二月二十九日に、江戸の矢部がやしきに着いた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼は弥助やすけという日本名までもらっていたが、日本の武将と武将の変乱に殉じる理由は毛頭もうとうないし、当人には何が何だか分らない出来事にちがいない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十日とおかほどたって、ごんが、弥助やすけというお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内かないが、おはぐろをつけていました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
こうして茅野雄が自宅へ帰って、下男の弥助やすけに迎えられて、自分の部屋へ入った時に、一つの運命が待っていた。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お楽と、お楽の後添い、——死んだお浅とお菊には継父けいふに当る弥助やすけ——の喜びはいうまでもありません。
加担人かたうどは車屋のうし元結もとゆひよりのぶん手遊屋おもちやや弥助やすけなどあらば引けは取るまじ、おおそれよりはあの人の事あの人の事、藤本のならばき智恵も貸してくれんと、十八日の暮れちかく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
店には父の弥助やすけと小僧ふたりが居あはせたので、驚いてすぐに彼女かれを介抱した。
「そんなところからなんだ、弥助やすけだな、このばか野郎」と卯兵衛はどなった
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
水を待つ間に、九鬼弥助やすけがいった。一方とはつまりもう一つの駕を指すので、その中には、俵一八郎が無念のいましめをうけて、押し込まれているのは明白である。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
反対に泥棒が立派な煙草入たばこいれを忘れていつたので、さしひきすると得をしてしまつた勘又かんまたさんでも、真鍮しんちゆうのぴかぴか光つた茶釜と牝鶏めんどりを一羽盗まれた弥助やすけさんと同じやうに、かんかんになつて怒つた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
弥助やすけという遊び人だ」
と——その中からただ一人、ソロリと庭へいこんで行ったのは、真ッ黒ないでたちをした弥助やすけだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、弥助やすけのおかみさんが、裏戸口から
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「こりゃ怖ろしい。してその相手は森うじか、天堂氏か、それともかくいう九鬼弥助やすけか」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)