引手ひくて)” の例文
女の容色の事も、外に真似手のない程くわしく心得ている。ポルジイが一度好いと云った女の周囲には、耳食じしょくが集まって来て、その女は大幣おおぬさ引手ひくてあまたになる。
不具になつても御厭おいとひなさらぬか、へ、自分がドンなに別嬪べつぴんだと思つて居るんだ、彼方あつちからも此方こつちからも引手ひくて数多あまたのは何の為めだ、容姿きりやうや学問やソンな詰まらぬものの為めと思ふのか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
このはなは婬婦いんぷなりしが娘おくま容顏きりやう衆人しうじんすぐれて美麗うつくしく見るものこゝろうごかさぬものなく二八の春秋はるあきすぎて年頃に及びければ引手ひくて數多あまたの身なれども我下紐わがしたひもゆるさじと清少納言せいせうなごんをしへも今は伊達だてなる母を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やはらかに風が引手ひくての柳かな 鬼史きし
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)