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弓杖
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ゆんづゑ
素戔嗚は
弓杖をついたなり、ぢつとこの舟へ眼を注いだ。舟は彼を
嘲るやうに、小さい
筵帆を光らせながら、軽々と浪を乗り越えて行つた。
弓杖で
炎天の
火を
吐く
巌を
裂いて、
玉なす
清水をほとばしらせて、
渇に
喘ぐ一
軍を
救つたと
言ふのは、
蓋し
名将の
事だから、
今の
所謂軍事衛生を
心得て、
悪水を
禁じた
反対の
意味に
相違ない。
素戔嗚は高い岩の上に、ぢつと
弓杖をつきながら、兇猛な微笑を浮べてゐた。