建仁寺けんにんじ)” の例文
ある時、建仁寺けんにんじの僧たちが師栄西えいさいに向かって言った。「今の建仁寺の寺屋敷は鴨河原かものかわらに近い。いつかは水難に逢うでありましょう。」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
女のもといたあたりに何となく心がかれるのでそちらへ廻って行って、横町を歩いていると、向うの建仁寺けんにんじの裏門のところを、母親が
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
と云われてかたえの岸辺を見ますと、二重の建仁寺けんにんじの垣にくゞり門がありましたが、是はたしかに飯島の別荘と思い
へだては中垣なかがき建仁寺けんにんじにゆづりてくみかはす庭井にはゐみづまじはりのそこきよくふか軒端のきば梅一木うめひとき両家りやうけはる
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と思ふと、忽ち又町になる。殊に今云つた建仁寺けんにんじの竹藪の如きは、そののち祗園ぎをんを通りぬける度に、必ず棒喝ぼうかつの如く自分の眼前へとび出して来たものである。……
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
帰りに例の茶園ちゃえんを通り抜けようと思って霜柱しもばしらけかかったのを踏みつけながら建仁寺けんにんじくずれから顔を出すとまた車屋の黒が枯菊の上にを山にして欠伸あくびをしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これから行かうとしてゐるのは、建仁寺けんにんじの何とかあんで、庭がいいから是非行くやうにと云つた。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
それも丁度ちやうど都踊みやこをどりの時分だつたから、両側には祗園団子ぎをんだんごの赤い提灯が、行儀ぎやうぎよく火を入れて並んでゐる。自分は始めてさつきの竹藪が、建仁寺けんにんじだつたのに気がついた。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)