底止ていし)” の例文
右の如く、底止ていしすることなき、突発の椿事が椿事をうみ、天井から先に火がついて、室内をパッとすさまじい明るさにしてしまいました。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが利根の激流は年々歳々、勢いを増してきて、城壁は崩れて底止ていしするところを知らない。ついに、三の丸も危なくなった。
老狸伝 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
気分のすさんだ倉地も同じ葉子と同じ心で同じ事を求めていた。こうして二人ふたり底止ていしする所のないいずこかへ手をつないで迷い込んで行った。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しこうして露国またそのきょじょうぜんとす。その危機きき実に一髪いっぱつわざるべからず。し幕府にして戦端せんたんを開かば、その底止ていしするところいずれへんに在るべき。
これも大問題ではありませんか。こん風に考えてけば、問題は問題を生んで底止ていしする所を知らないのです。おたずねになるから、こんな事も言います。
氏子周章しゅうしょう、百方工夫して基本金を積み存立を得たるも、また値上げ、また値上げとなり底止ていしするところを知らず。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
父の遺書を読んで以来、幾度か驚き、幾度か意外の感に打たれたが、数多い書類を読み進むほど、事件は益々奥深くなり、神秘性を増して、底止ていしする所を知らないのだ。
こうして縷述るじゅつして来ると彼の法螺の底力は殆んど底止ていしするところを知らない。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この快楽は生に向って進むに従って分化発展するが故に——この快楽は道義を犠牲にして始めて享受きょうじゅし得るが故に——喜劇の進歩は底止ていしするところを知らずして、道義の観念は日を追うてくだる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただにこれを一掃するのみならず、順良の極度より詭激の極度に移るその有様は、かの仏蘭西北部の人が葡萄酒に酔い、菓子屋の丁稚でっちかんふけるが如く、底止ていしするところを知らざるにいたるべし。
経世の学、また講究すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
また白く白く擾乱じょうらんして底止ていしするところを知らないのだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
あなたに書く事は底止ていしなく書く事です。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)