幻術げんじゅつ)” の例文
「ああ、もうよほどったでしょう。チュウリップの幻術げんじゅつにかかっているうちに。もう私は行かなければなりません。さようなら。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
幼少ようしょうのとき、鞍馬くらま僧正谷そうじょうがたに果心居士かしんこじから教えられた幻術げんじゅつ。おそらく、あのくらいのことなら、弟弟子おとうとでし竹童ちくどうにもできるであろう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今にはじめぬ鉄道の幻術げんじゅつ、此正月まで草葺の小屋一軒しかなかったと聞く㓐別に、最早もう人家が百戸近く、旅館の三軒料理屋が大小五軒も出来て居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その後久しく消息を聞かざりしが、またも例の幻術げんじゅつをもて首尾しゅびよく農学博士の令室れいしつとなりすまし、いと安らかに、楽しく清き家庭をととのえおらるるとか。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
但し紅教は幻術げんじゅつを巧みにするものである。理藩院りはんいんの尚書を勤めるりゅうという人が曾て西蔵ちべっとに駐在しているときに、何かの事で一人の紅教喇嘛に恨まれた。そこで、或る人が注意した。
最初に悟浄ごじょうが訪ねたのは、黒卵道人こくらんどうじんとて、そのころ最も高名な幻術げんじゅつ大家たいかであった。あまり深くない水底に累々るいるいと岩石を積重ねて洞窟どうくつを作り、入口には斜月三星洞しゃげつさんせいどうの額が掛かっておった。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
やっぱり、魔法博士の幻術げんじゅつではないのでしょうか。
魔法博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「こりゃ、そちは幻術げんじゅつをやるだろうが、諜者ちょうじゃはから下手べたじゃの。さぐりにかけては、まだそこにいる男のほうがはるかにうまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諒闇りょうあんの黒布を瞬く間に全天におおうたり、摩天まてん白銅塔はくどうとうを見る間に築き上げては奈翁なぽれおんの雄図よりも早く微塵みじんに打崩したり、日々眼を新にする雲の幻術げんじゅつ天象てんしょうの変化を、出て見るも好い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ともすると、幻術げんじゅつをもって人をまどわす妖賊ようぞく、なにさま、陣ぞろいのまもありますゆえ、それが上策じょうさくかも知れませぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)