とせ)” の例文
いや、見恍みとれてもいる。——これがわが子の修業の端か。ひととせ、都に出て、他人のきびしい撥で打たれつつ習い覚えた曲の一つか。いじらしさよ。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ピエートロ未だ一僧侶なりし時アヴェルラーナの院主の請ひによりかしこに行きて二とせばかり止まりゐたることありと
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
武田氏を攻防いくとせをかさねて、今日こんにちまでしだいに諸処の城とりでを失い、いまここに決戦のときを迎えたのだ、まん一にも浜松の城下を甲州勢の蹂躙じゅうりんにまかせるとせば
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まをとめのなおわらはにて植ゑしよりいくとせ経たる山吹の花
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
人妻は六とせ七年いとまみ一字も著けず我が思ふこと
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
とせ、日野俊基が、山伏姿となって、この島へ忍び渡って来たときも、日満の手びきではあるが、ひそかに、両者は一ト夜を語り合って別れている。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
フォレーゼよ、汝世を變へてまさる生命いのちをえしよりこの方いまだ五とせの月日經ず 七六—七八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ひととせ、弥五郎一刀斎が、舟で大坂へ下る途中、骨逞ほねたくましい船頭が
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)