干菓子ひがし)” の例文
「この低い柵の開きを開けると、眠っていても直ぐ起きて来ますからそいつへ干菓子ひがしをくれてやるんです。喜んでいて来ます」
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
外にデザートの干菓子ひがしあり林檎に柿の果物あり。珈琲こーひーはモカの上等を用い、一品一物なこれ卓上の珍ならざるはなし。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お増はくんくん鼻を鳴らしながら、なつかしいあるじの膝や胸へ取りついて来る愛物の頭を撫でながら、買って来た干菓子ひがしなどをこわして口へ入れてやった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「このあいだお前に貰った干菓子ひがしも綺麗だったが、備前屋の娘も綺麗だったな」と、半七は歩きながら云った。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
余はその薄くて規則正しい花片と、くうに浮んだように超然と取り合わぬ咲き具合とを見て、コスモスは干菓子ひがしに似ていると評した。なぜですかと聞いたものがあった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時、正香は条山神社の方からさげて来た神酒みき小樽こだる干菓子ひがし一折りとをそこへ取り出した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『このひな干菓子ひがしを、外の、船頭の子にらせても』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第十二の挽茶ひきちゃおよび香入こういり氷菓(グラス オー テイ、グラス ア ラ ワニー)は挽茶および香料入のアイスクリーム。第十三の果実製菓(ガドー エ フルツ)は水菓子と干菓子ひがしなり。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大抵の客は甘納豆あまなっとうとか金米糖こんぺいとうとかいうたぐいの干菓子ひがしをたずさえて来るので、それを半紙に乗せて盆の上に置き、ご退屈でございましょうからと云って、土産のしるしに差出すのである。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)