しょく)” の例文
旧字:
今後は難渋な句の誤訳をも、もしどこかにあったら、発見して貰いたい。私は訳本ファウストを読まれる人達に、一層深い望をしょくしている。
不苦心談 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
自分になんらの悪気わるぎはなかったものの、妻が自分にとつぐについては自分に多大ただいのぞみをしょくしてきたことは承知しょうちしていたのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
旧社分散シ索居さっきょノ嘆ナキあたハズ。たちまち書ヲかたじけなくシ、大集ノ刪定さんていしょくセラル。忙手繙読はんどくスルニ一堂ノ上ニ相会晤かいごスルガ如シ。楽ことニ甚シ。すなわち一夕ニシテ業ヲフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
校長は町と会社との関係を説いて、みだりに平地に風波を起すのは得策でないと説諭した。道也の最後に望をしょくしていた生徒すらも、父兄の意見を聞いて、身のほどを知らぬ馬鹿教師と云い出した。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
或日東堂が役所で公用の書状を発せようとして、藤田に稿をしょくせしめた。藤田は案をして呈した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
青門老圃らうほひとり一室の中に坐し、冥思めいし遐捜かさうす、両頬せきを発し火の如く、喉間こうかん咯々かく/\声あるに至る、稿をしょくし日を積まざれば出でず、思を構ふるの時にあたつて大苦あるものの如し、既に来れば則ち大喜
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)