居候ゐさふらふ)” の例文
官も任地も有つたものでは無い、ぶらりと武蔵を出て下総へ遊びに来て、将門の許に「居てやるんだぞぐらゐな居候ゐさふらふ」になつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お母さまは、君を居候ゐさふらふだと云つたよ。君にはちつともお金が無いんだ。君の父親おやぢは、何も君に殘して行かなかつたんだ。
僕は大学に在学中、雲州うんしう松江まつえ恒藤つねとうの家にひと夏居候ゐさふらふになりしことあり。その頃恒藤に煽動せんどうせられ、松江紀行一篇を作り、松陽新報しようやうしんぱうと言ふ新聞に寄す。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
手代の與左吉、下女のお作、これは寶掘りのチヤムピオンで、それにかゝうどのお富、養子の草之助、居候ゐさふらふの吉太郎まで、ぞろ/\とつながつて歸りました。
アダムの二本棒にほんぼう意地いぢきたなさのつまぐひさへずば開闢かいびやく以来いらい五千ねん今日こんにちまで人間にんげん楽園パラダイス居候ゐさふらふをしてゐられべきにとンだとばちりはたらいてふといふ面倒めんだうしやうじ〻はさて迷惑めいわく千万せんばんの事ならずや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
一体貫一はお前の何だよ。何だと思ふのだよ。鴫沢の家には厄介者の居候ゐさふらふでも、お前の為には夫ぢやないかい。僕はお前の男妾をとこめかけになつたおぼえは無いよ、宮さん、お前は貫一を玩弄物なぐさみものにしたのだね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「お舟のところに居候ゐさふらふしてゐる和助——從兄いとことか何とかいふ、不景氣な野郎を親分は知りませんか」
まだ叔母さんの二階に居候ゐさふらふをしてゐる獨り者ですが、平次のためには大事な見る眼嗅ぐ鼻で、この春から十手を預つて、今ではもう押しも押されもせぬ一本立の御用聞でした。
「お靜は當分里のお袋に預けたよ。——俺はな、八。當分、八五郎の家に居候ゐさふらふときめたよ」
勝造は腹を立てゝ飛出し、お勇は女中とも居候ゐさふらふともなく踏止りました。ゆく/\は徳三郎に娶合めあはせようと言ふ話もありますが、年が違ひ過ぎるので、お勇の方では承知しさうもありません。