小流こなが)” の例文
するとちょうど、小流こながれのがりかどに、一本の小さなやなぎえだが出て、水をピチャピチャたたいておりました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
近いものよりは却て遠い昔の記憶が軒にしたゝる雨だれの如く、とぎれ/\に浮んで來る。私はよく子供の時分に、大雨の晴れた午後ひるすぎ四手網よつであみを持つて、場末の町の小流こながれに小魚こうをあさつた事がある。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
川は二三町の幅のあるのも一間二間の小流こながれも皆氷つて居る。積つた雪も其處だけ解けずにあるから、盛上つて痩せた人の靜脈の樣である。七日目なぬかめにまた一人の露西亞女が私の室の客になつた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いくつもの小流こながれや石原いしはらえて、山脈さんみやくのかたちもおほきくはつきりなり、やま一本いつぽん一本いつぽん、すぎごけのやうにわけられるところまでたときは、太陽たいやうはもうよほど西にしれて
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
何処どこということなく、道を歩いてふと小流こながれに会えば、何のわけとも知らずその源委げんいがたずねて見たくなるのだ。来年は七十だというのにこのへきはまだ消え去らず、事に会えば忽ち再発するらしい。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)